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「AirPods Pro」のファームウェアによる性能低下問題について、Appleは一刻も早く公式に説明すべき

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Appleの新しいワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」(公式リリースから)

去年10月30日に発売された「AirPods Pro」のファームウェアに関する騒ぎは、未だに解決していないようである。

問題の要点(記事公開時点)

  • 現在配信されている「AirPods Pro」のファームウェア(2B588)には、ノイズキャンセリング機能が従来と比べて低下してしまうという欠陥がある。
  • 一時期、もっと新しいファームウェア(2C54)が配信されたが、ノイズキャンセリング機能の劣化がさらに著しくなったという声が相次ぐ。その後、程なくしてApple側が配信を停止してしまう。
  • 「AirPods Pro」の交換品について、現在未配信のファームウェア(2D3)が適用されていることが発覚する。
  • 「AirPods Pro」のファームウェアは、一度最新版にアップデートしてしまうと、ロールバック(もとに戻すこと)ができなくなる。そのため、正常動作していたファームウェア(2B584)に戻すことは現状不可能となっている。
  • 当然のことだが、「AirPods Pro」の左右でファームウェアが異なっていれば、正常な動作が期待できなくなってしまう。

経緯(外部サイト)

この問題の詳しい経緯は「iPhone Mania」さんの以下の記事にてまとめられている。ぜひとも参考にしていただきたい。

所感

とりあえず何か言ってほしい

まず、Apple製品の一ユーザとして私が申し上げたいのが、「問題が実際に起こっている以上、何かおっしゃってください」ということ。言ってくれるのとくれないのとでは、商品の購入意欲に大きな違いが出てくる。

私自身のことについて言えば、Macは最近ほとんど使わなくなったものの、iPhoneは現行の最新機種だし((ちなみに私からしてみると4代目に当たる。))、決して影響を受けないわけではない。2世代ぶりにモデルチェンジした「MacBook Air」やかなり割安となった「Mac mini」にも興味が湧いてきているというのに、このような態度が一部分野で起こっている以上、どうしても他の製品の購入もためらってしまう。

「買いたくないなら買わなくていい」――それはもちろん、そのとおりだろう。だが、そのような文句は、自社商品の不具合や会社の不祥事を正当化するには、あまりにも拙い。そして、不買の動きが広まれば、会社に受けるダメージもそれだけ大きくなってくる。Appleがそれで良いというのなら、私ももう何も言えない。けれども、それならそれで、これまでにAppleの製品を買い支えてくれていた方々には非常に失礼ではないかと思う。

いずれにせよ、今後のユーザ離れを深刻化させないためにも、やはり、コメントの1つくらいは頂戴したいものである。実際のAppleの進め方は、あまりに拙すぎる。

長きにわたる沈黙が生み出す「負債」

現実に、最新のファームウェアで不具合が起こっているという声が数多くあがっているのにもかかわらず、従来品の「2B584」にダウングレードさせてもらえないことも問題ではある。けれども、それ以上に解せないのが、この問題に対するAppleの対応だ。

「不具合がある」ということについて、潔く認めるも否定するも会社次第ではある。ただ、何も言わずにずっと黙ってばかりいると、ユーザの不信感が募る一方となるのは間違いない。それなのに、事が起こってから半年が経とうとしている今になっても、未だに沈黙を貫いているというのは、本当に理解に苦しむ。

Appleという会社自体についてみれば、この騒動の影響はそれほどでもないのかもしれない。同社はiPhoneやMacBookを中心にヒット商品を数多く抱えており、高性能イヤホンが1種類こけたところで、それは大した問題ではないと考えている可能性もある。しかし、仮にそう思っていたとしても、決して言葉や行動には出してはいけない。買ってもらった時点で、その製品はメーカーのものではなく、消費者のものとなるのだから。

仮に問題に対して無言のまま次のファームウェアのアップデートを迎えることになるのならば、今後はAppleという会社全体で同じようなスタイルを貫き通すことが慣例化するとしても、決しておかしな話ではない。((iPhone・iPad向けのOS「iOS13.3.1」ではVPNにまつわる深刻な不具合が報告されており、最新版「13.4.1」でも未修正である。Appleはこの件についても、「13.3.1」配信開始から3ヶ月を過ぎてもなお、未だに無言のまま。海外メディアによれば「Appleは問題を把握している」ということらしいのだが、公式にはそのような発言はない。)) 仮にノイズキャンセリング機能が元通りになったとしても、説明がなされない限り、納得しないユーザは少なくないことだろう。

いくらMacBookの最新版でキーボードを使いやすく刷新してCPU等の性能を向上させることがあるとしても((当記事を公開した当日には、そのような改良が施された「MacBook Pro 13(Mid 2020)」が発表されている。))、それだけでユーザが満足するわけではない。むしろ、「自社製品に対するAppleのスタンスはいい加減だ」などという悪評が広まってしまったら最後、まともなユーザは離れていってしまい、WindowsやAndroid、Chromebook、Linuxなどに傾倒することとなる。スピーカーやイヤホンのユーザならば、BoseやSonyなどに転向することだろう。その一方で、Apple製品を買ってくれるのは、盲目的な狂信者だけになってしまいかねない。そして、最悪の場合、Appleは潰れるか買収されるか、というところにまで落ちぶれることになる。

沈黙によって生成される負債を、そのまま放置していてはいけない。Apple抜きではまともに暮らすことすら困難となっている今、世界全体で大きな損害を被ることになるかもしれないだろうから。

関連:発売時点で書いた記事

新しいファームウェアが配信されるも性能低下問題は未だ解決せず(2020/05/16追記)

その後、新しいファームウェア「2D15」が5月5日深夜頃(日本時間)より配信開始された模様(情報が遅くなって申し訳ございませんでした)。

このアップデートにより、「左右でファームウェアのバージョンが異なるために動作に支障を来す」という問題については解決された。一方で、ノイズキャンセリングの問題は未だに修正されていないという報告が少なくなく、発売当初のファームウェアに戻してほしいという声さえも見られるほど(但し、上記「2C54」よりはマシ、という意見がほとんどで、若干ではあるが改善された模様)。

今回の事態は、おそらくは「品質向上」のために努力した結果なのだろうとは思う。しかし、却って余計な手を二度、三度と加えてしまったがために、多くのユーザからの顰蹙を買い続けた形となった。

ここからどう持ち直してくるか、あるいは商品そのものを無かったことにするのか。これからも事態の流れを見守りたいところである。

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