概要
「Obsidian」とは、2020年3月にリリースされたばかりの新鋭メモアプリです。Markdown文書の数々をフォルダ内に収納し、Wikiみたいな設計に仕立て上げられることが特徴となっています。
このアプリはクロスプラットフォーム設計のため、WindowsでもMacでもLinuxでも利用できる他、モバイル端末OS(iOSおよびAndroid)環境であっても利用することが可能となっています。また、個人利用に限り無償で利用できるので、導入敷居も限りなく低いです。
利用料金
上で述べた通り、利用料金については、個人利用に限り無料となっています。法人利用の場合は1ユーザにつき1年50米ドルです。
また、支援用として1年25米ドル(最低額)のプランが用意されています。支援者には未公開機能のアーリーアクセスや専用のコミュニティなどが提供されているとのことです。
主な機能
- 英語、日本語を含む20言語以上に標準で対応
- Markdown文書やWiki収納フォルダ(保管庫)の作成、編集ができる
- 指定したMarkdown文書を別のアプリで開くことも可能
- 異なる文書へのリンクを、Wikiのキーワードのように、簡単に生成することが可能(無効化もできる)
- 文書同士のリンク状況、関係性の図解表示(グラフビュー)
- Vimライクなキーマッピングに変更可能な他、操作ごとに独自のショートカットキーを割り当てることも
- 保管庫ごとに編集画面を異なるデザインに変更することができる
- 独自のWiki公開機能あり(有償、後述)
- 同期専用クラウドあり(有償、後述)
デモ画面(スクリーンショット)
公式サイトのトップページにはもっと詳細なデモ画面が展示されています。以下のスクリーンショットは使い始めの参考程度に留めておいてください。
Wiki公開機能(有償)
自分の書き上げたMarkdown文書の数々を、専用サーバにアップロードする、というサービスが提供されています。アップロードしたMarkdown文書はどなたでも閲覧可能となるため、ちょっとしたナレッジベースの公開にはうってつけかと思われます。
記事公開現在は年額96米ドルまたは月額10米ドルで利用できます。ただし、「2021年9月末(つまり今月末)をもって早期割引を終了する」という旨のことが公式サイトにて予告されており、近く値上げが行われそうです行われました。
同期専用クラウド(有償)
独自のバックアップや履歴機能を搭載した専用のクラウドサービスも提供されています。こちらは年額48米ドルまたは月額5米ドルで利用可能ですが、この機能についても10月より値上げが予定されています行われています。
同期について(参考)
iOS版についてはiCloud Driveでの同期も標準で提供されており、Macでも問題なくiCloud Driveで動作します。テストはしていませんがWindowsでもおそらく大丈夫だと思います。Linuxについては分かりませんが、少なくともAndroidを使わないという条件下であれば、無理して専用クラウドを導入する必要はないでしょう。
逆に言えば、iOS版は専用の同期とiCloud Drive以外の同期はサポートしておらず、Android版でサポートしている数々の同期サービスを流用することはほぼ不可能と言って良いです。iOSでもAndroidでも同期機能を利用したい場合は専用同期の一択になります。
モバイル端末上での利用上の注意点について、詳しくは以下の文書をご覧くださいませ。
開発動機・開発チーム
上記ページで、開発動機やチームのことなどについて紹介されています。
動機に関しては、大雑把に言えば「従来のナレッジベースたりうるアプリがいまいちしっくり来なかったから」というところでしょうか。Obsidianが「A second brain」となり得ることをテーマに掲げ、日々開発を進めているとのことです。
また、開発チームについてですが、既にDynalistという著名メモアプリに関わっている実績があるそうです(私も使っていた時期があります)。現に、App Store(iOS)でのアプリ公開元もDynalistとなっています。
Dynalistはアウトライナーがデザインの基礎となっていますが、Obsidianはどちらかと言えばWikiベースのため、ほぼ同一チームの開発物であっても、しっかり棲み分けができるかと思います。
気になったところ
アプリを使っていて気になったところを、簡単にいくつか挙げることとします。
- 肝心の編集機能がまだまだ発展途上かつ貧弱そのもので、数々の先行アプリと比べても、お世辞にも使いやすいとは言えません。他アプリ(TyporaやiA Writerなど)と併用するのは現状必須と言えます。
- 専用同期サービスの信頼性や利便性がどれほどのものかも気になるところではあります(特に容量制限について述べられていないあたり)。価格も結構高いので、例えばGoogle DriveやDropboxなどの上位プランを利用しているのであれば、そちらを優先する方が良いかと思います。
- Wikiの公開サービスについても、WorkFlowyやScrapboxなど同種サービスの公開機能と比べるとかなり割高という印象です。しっかりしたデータベースを用意できないというのであれば無理に使う必要もありません。
アプリ総括
全般的に考えると「尖ったところ、光るものはあるが、まだまだ発展途上である」という評価に落ち着きます。少なくとも、全ての方にオススメできるものではありません。
「とにかくMarkdownでWikiライクな知識集成を拵えたい」という方にはうってつけかと思いますが、じっくりと腰を据えて文書作成に取り組みたい方はTyporaでも十分に間に合うでしょう。アイデアを蓄積しまとめ上げるにしても、同チーム発のDynalistが既にありますし、何ならWorkFlowyやEvernoteを使っても良いわけです。選択肢は既にいくつも用意されていますので、大抵の方にとってみればObsidianを導入する必然性はないと思われます。ただし、上でも申し上げた通り、個人利用は原則無償のため、時間の許す限りいくらでも試用できるという敷居の低さは良いと思います。
操作感やUIについては、プログラミングエディタのAtomに割と近い印象があります。Vimライクな操作を設定できたり、それっぽいUIでコマンド入力を行ったりするあたりもそっくりですし、プラグイン導入によりいくらでも機能を増やせる というあたりも開発思想の類似性を窺わせてくれます(ただしプラグインはデフォルトでオフとなっています)。そういった意味では、今後のアップデートや使い方によっては、ものすごいアプリに化ける可能性を秘めているとも言えるでしょう。
いずれにせよ、Obsidianがこれからどのように成長していくかが非常に楽しみです。ちょこちょこと使いつつ、自分なりのナレッジベースを築き上げながら、アップデートを心待ちにしようかと思います。