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「しんじょう君」と「ちぃたん☆」をめぐる裁判の経緯|須崎市とクリーブラッツの訴訟を時系列で整理

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高知県須崎市のキャラクター「しんじょう君」と、株式会社クリーブラッツが運営する「ちぃたん☆」。両者は、当初、動画やイベントなどで協力関係にありました。その後、キャラクターの使用や権利関係をめぐって、仮処分の申立て、損害賠償請求、使用差止め等の反訴へと進みました。

2026年10月7日には、知的財産高等裁判所が控訴審判決を言い渡しています。

この記事では、裁判所が公開した判決文、須崎市やテレビ東京の公式発表、当時の報道を基に、制作段階から控訴審までの経緯を整理します。当事者の主張と裁判所の判断を区別し、筆者による評価・論評は加えていません。

2026年10月19日時点で確認できる情報のまとめになります。最新情報については各自でご確認のほどよろしくお願いします。

《はじめに》判決全文

本文中の頁数は、判決書に印字された頁数です。

【重要】 本記事の位置づけについて

弁護士法第72条は、法律に別段の定めがある場合を除き、弁護士・弁護士法人以外の者が、報酬を得る目的で法律事件に関する法律事務を取り扱うことなどを業とする行為を禁止しています。非弁行為への該当性は、行為の具体的な内容や態様などによって判断されます。

本記事は、公表された裁判資料・公式発表・報道を紹介する情報提供記事です。個別の法律相談、法的助言、交渉・手続きの代行を目的とするものではありません。本文中の法的判断は裁判所の判断として紹介し、筆者が独自に当事者の適法性や責任を判定するものではありません。

双方の対応や本件の経緯についての評価は、掲載資料を踏まえて読者の皆さまに委ねます。個別の法律問題について判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

区別しておきたい名称と手続き

本件では、「ちぃたん☆」という同じ名前を持つ、実在するカワウソとキャラクターが登場します。また、2019年の仮処分と、2021年以降の本訴・反訴は別の手続きです。

しんじょう君

須崎市のキャラクター

実在するカワウソ「ちぃたん☆」

2018年1月に須崎市観光大使に委嘱され、2019年1月に解嘱されたコツメカワウソ

キャラクター「ちぃたん☆」

イラストや着ぐるみなどで活動するキャラクター。今回の使用差止め等の対象

仮処分

通常の訴訟の結論を待つ前に、暫定的な措置を求める手続き

本訴

本件では、クリーブラッツが須崎市に対して起こした損害賠償請求訴訟

反訴

本件では、須崎市が同じ訴訟手続きの中でクリーブラッツに対して起こした、使用差止め等を求める訴え

なお、須崎市は、観光大使に委嘱した対象は実在するカワウソであり、キャラクター自体には委嘱していないと説明しています。

2017〜2018年:キャラクターの制作と協力関係

2017年9〜11月:デザイン・着ぐるみの制作

一審判決文によると、2017年9月、会社側と市側はカワウソの観光大使就任やキャラクター化について協議しました。

会社側は、「しんじょう君の親友」という設定で、しんじょう君に似せたキャラクターを制作したい旨を伝え、デザイナーの紹介を依頼しました。市の担当者は9月27日、しんじょう君のデザイナーの連絡先を伝えています。

10月には、会社側とデザイナーが制作を進め、市の担当者にもデザイン案が共有されました。担当者は案についてコメントし、着ぐるみの寸法に関する情報も提供しました。

11月8日、市の担当者は、会社側から許可の取得状況を尋ねられ、しんじょう君そのものを製造するわけではないため、特に許可は必要ない旨のメールを送りました。その後、正式な書面を求める会社側に対し、市側は許可を求める事項を書面で提出するよう伝えました。判決文では、その後、この許可に関する特段の要請はなかったとされています。[一審判決:64〜69頁]

2017年末〜2018年:撮影会、観光大使委嘱、動画などでの協力

  • 2017年11月29日: 「ちぃたん☆」の着ぐるみが完成
  • 2017年12月15日: 市の担当者の立会いの下で、両キャラクターの撮影会を実施
  • 2017年12月18日以降: クリーブラッツが「ちぃたん☆」に関する国内商標を出願。その後、海外でも出願
  • 2018年1月18日: 須崎市が実在するカワウソ「ちぃたん☆」を観光大使に委嘱。式には着ぐるみも出席
  • 2018年中: 共演動画、SNSでの相互紹介、商品化、イベント共演、海外展開などに関するやり取りを実施

一方、「ちぃたん☆」の動画について、危険性や子どもの模倣を懸念する苦情が市に寄せられたことも、判決文に記載されています。[一審判決:69〜76頁]

2019年:活動停止の要求と仮処分手続き

1〜2月:観光大使の解嘱、書面の送付、双方の説明

2019年1月17日、市は実在するカワウソ「ちぃたん☆」を観光大使から解嘱しました。公式発表では、1年ごとの見直しでPRの実態を確認できなかったことを理由としています。

その後、会社への活動停止の要求、テレビ局への通知、記者会見などが行われました。

  • 1月19日到達の書面: 市が会社に対し、キャラクターの使用が著作権侵害・不正競争防止法違反に当たると主張。使用の中止とデザイン変更を要求
  • 1月29日付の書面: 会社が市に対し、複数の企画が進行中であり、使用できなくなると損害や賠償をめぐる紛争が生じるとして、話し合いによる解決を申し入れ
  • 1月31日付の書面: 市がフジテレビとテレビ東京に対し、着ぐるみの番組出演等が市の著作権を侵害するなどと主張し、中止を申し入れ
  • 2月6日: 市長が定例記者会見でキャラクターの使用や商標出願等について市の見解を説明。資料とスライドを配布
  • 2月8日: 会社が報道機関に書面を送付し、市からデザイナーの紹介を受け、許可は不要との回答も得ていたことなどを理由に、権利侵害ではないとの見解を表明。市も同日、会社側の説明を受けて報道機関に書面を送付
  • 2月15日: 市長が報道機関にコメントを発出

ここに記した著作権侵害等についての説明は、当時の市の主張です。会社側は権利侵害を否定していました。[一審判決:11〜13頁、76頁]

2月15日:テレビ東京がアニメの放送見合わせを発表

テレビ東京は、4月3日から予定していたアニメ「妖精ちぃたん☆」の放送見合わせを、2月15日に発表しました。番組公式サイトに記載された理由は「諸事情」です。

2月16日付:須崎市が仮処分を申し立て

市は東京地裁に、キャラクターのイラストと着ぐるみを営業活動に使用することの差止めを求める仮処分を申し立てました。

市が根拠として挙げたのは、著作権・商標権の侵害と、不正競争防止法上の不正競争です。事件番号は「平成31年(ヨ)第22022号」です。[一審判決:13頁]

9月20日:東京地裁が申立てを却下

東京地裁は、市がイラストや着ぐるみの使用を黙示に許諾していたと認められることなどを理由に、仮処分申立てを却下しました。

「黙示の許諾」とは、明示的な許可の言葉や契約書だけでなく、当事者のやり取りや行動から利用を認める意思があったと判断されることを指します。

市は、この決定を不服として知財高裁に即時抗告しました。[一審判決:13〜14頁/7]

12月25日:知財高裁が即時抗告を棄却

知財高裁は市の即時抗告を棄却しました。事件番号は「令和元年(ラ)第10008号」です。一審判決文によると、この決定はその後確定しました。[一審判決:13〜14頁]

この手続きは、市による申立ての「撤回」ではなく、裁判所による申立ての却下と、即時抗告の棄却です。

2020〜2024年:和解協議から本訴・反訴へ

2020年1月27日:市が和解協議の前提条件を提示

一審判決文によると、市は1月27日付の書面で、次の条件を提示しました。

  • 個別の活動・使用について、市の事前の書面承諾を得ること
  • 国内外の商標出願を取り下げ、今後も同一・類似商標を出願しないこと
  • 活動・使用期間を協議成立後1年間とし、その後の更新は市が判断すること

その後、双方は活動・使用条件や、「ちぃたん☆」を「しんじょう君」の二次的著作物と認めるかなどについてやり取りしましたが、協議はまとまりませんでした。[一審判決:77頁]

2021年7月15日:クリーブラッツが損害賠償請求訴訟を提起

会社は、市の取引先への通知や記者会見等によって損害を受けたとして、東京地裁に提訴しました。事件番号は「令和3年(ワ)第18479号」です。

一審判決に記載された会社側の請求額は、4,323万5,455円と遅延損害金でした。この金額は、一審判決時の請求内容を示しています。[一審判決:2頁、14頁]

2023年3月23日:須崎市が反訴を提起

市は、キャラクターの使用差止め等を求める反訴を提起しました。事件番号は「令和5年(ワ)第70136号」です。

市は、着ぐるみ・イラスト等の使用差止めや廃棄、損害賠償または不当利得の返還などを求めました。一審判決に記載された損害賠償の主位的請求額は、2,695万円です。「主位的請求」とは、複数の請求を段階的に示す場合に、まず認めるよう求める請求を指します。[一審判決:2〜8頁、14頁]

2024年10月17日:一審の口頭弁論が終結

東京地裁で、本訴・反訴の口頭弁論が終結しました。当事者の主張や証拠についての審理が終わり、判決に向けた段階に入りました。[一審判決:1頁]

2025年:一審判決と控訴

2月7日:東京地裁が一審判決

東京地裁は、会社側の本訴請求を一部認め、市に786万2,347円と遅延損害金の支払いを命じました。会社側の残りの請求と、市の反訴請求は棄却しました。

判決は、市が「ちぃたん☆」の独自の商業活動を黙示に許諾していたと判断しました。市が主張した許諾の無効・取消し・解除や期間満了は認めませんでした。

また、市の通知・会見等に関する対象行為について、虚偽の事実の告知・流布に当たると判断し、国家賠償法に基づく賠償を一部認めています。[一審判決:1頁、85〜105頁]

一審判決後:須崎市が控訴、会社側も附帯控訴

市は一審判決を不服として控訴しました。3月4日付の公式発表では、判決を容認できず、代理人弁護士と協議したうえで控訴したと説明しています。

クリーブラッツも、一審で認められなかった損害賠償部分について附帯控訴しました。附帯控訴は、相手方の控訴を受けた側が、自らも判決の変更を求める手続きです。[二審判決:4〜6頁]

2026年:控訴審判決

7月8日:控訴審の口頭弁論が終結

知財高裁で口頭弁論が終結しました。控訴審の事件番号は「令和7年(ネ)第10027号、同年第10054号」です。[二審判決:1頁]

10月7日:市の控訴を棄却、賠償額を変更

知財高裁は、市の控訴を棄却しました。一方、会社側の附帯控訴を一部認め、市が支払う賠償額を1,887万7,802円に変更しました。

項目一審・東京地裁控訴審・知財高裁
判決日2025年2月7日2026年10月7日
市に命じた賠償元本786万2,347円1,887万7,802円
遅延損害金2021年8月20日から支払済みまで年5%同左
市の使用差止め等の反訴請求を棄却市の控訴を棄却し、一審の結論を維持
会社側の損害賠償請求一部認容附帯控訴を一部認め、認容額を変更

控訴審は、黙示の許諾が存在するとの判断を維持し、市が主張した許諾の撤回・終了等を認めませんでした。損害額については、商品化や出版などの案件に関する認定を変更しています。

会社側の請求全額が認められたわけではなく、認容額を超える部分は棄却されました。[二審判決:1〜6頁、26〜34頁]

判決後:市長が今後の対応を検討すると説明

同日の記者会見で、市長は、判決文を確認したうえで弁護士や議会と相談し、今後の対応を検討する意向を示しました。

2026年10月19日時点で確認できる手続状況

この記事で確認できた司法判断は、2026年10月7日の控訴審判決までです。

確認した公表資料からは、その後の上告・上告受理申立ての有無や、控訴審判決の確定までは確認できていません。2019年の仮処分手続きにおける決定の確定と、2026年の控訴審判決の確定は区別して記載しています。

冒頭にも書きました通り、当事者の対応や裁判の経緯に対する評価は、本記事では行っていません。詳しい主張・認定内容については、判決全文や公式発表をご確認ください。

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