この記事ではCMSの「ClassicPress」を使った感想を簡単にまとめております。
簡単に言ってしまえば、ブロックエディター(通称「Gutenberg」)を意図的に機能から外した「WordPress」でございます。その点を除けば、WordPressとはほぼ変わりありません。クラシックエディターのみで記事を作成するという仕組み上、メリットもありますが、制約も大きいです。
概要
WordPress5.0以降で導入されたブロックエディター(通称「Gutenberg」)を敢えて使えないようにしたのがClassicPressです。言ってしまえば、クラシックエディターしか使えない「WordPress」なのです。
WordPress本家と同じく「GPL Ver.2」ライセンスにて公開されており、どなた様も無料で使用することができます。
「Gutenberg-free」というClassicPressのポリシー
「Gutenberg」については、年月を経るごとに徐々に改善されていっているとはいえ、今でも使うのに抵抗のある方も決して少なくはないと思われます。また、パフォーマンス上の問題や社内規定への抵触の可能性など、懸念点を完全に払拭できたわけではありません。
とはいえ、WordPress 4.9(WP本家でGutenbergの導入されていない最後のバージョン)を使い続けるのもセキュリティ上の問題がありそうです。現状、4.9にもメンテナンスリリースは出され続けておりますが、WP公式からもアナウンスされている通り「安全に使用することはできません」。1 もちろん、使用されている技術の陳腐化という問題点もあります。
そのため、現在、有志の方々により「ClassicPress」プロジェクトが進められております。紆余曲折あり、WordPressとの互換性を保つという事情もあって、現在のClassicPressはWordPress 6.2.3から再フォークされたものとなっております。2 ちなみに、前バージョンはWordPress 4.9からフォークされたものだったようです。3
なお、ClassicPressに関するポリシーについては、以下の公式リリースに詳しく書かれております。
「ClassicPress」機能について
主な機能
- クラシックエディターが使える代わりに、Gutenbergが使えません。WordPress本家のように、プラグインやテーマの設定等で切り替えることもできません。
- Gutenbergが使えないので、当然ウィジェットも旧式のままです。
- それ以外には、管理画面も含めて、基本的にWordPressとほぼ同じです。
メリット
- Gutenbergを使って記事を書く上で最大のデメリットとも言える「動作の重さ」「反応の悪さ」を感じることがほぼありません。そのため、それほど長くない記事であれば、サクッと書いてサクッと出すことができます。
- 対応していないプラグインもありますが、一方で使えるプラグインもあります。また、導入するプラグインが強制的に少なくなる分、動作についても本家に比べると軽量になりやすいと思われます。
- クラシックエディターの互換性を維持しつつ、最新のPHPやセキュリティ事情に対応してくれようとしているのは心強いです。また、WordPressとの互換性も保たれており、移行用のプラグインも準備されているようです(後述)。
デメリット
- 対応しているプラグイン・テーマがそれほど多くはありません。(Gutenberg対応の機能などは軒並み使えませんし、そもそも全く動作しないことさえ起こり得ます)
- 現状、日本語化ファイルが用意されていません。WordPress公式版から日本語の翻訳ファイルを流用することはできますが、すべてを翻訳できているわけではありません。4
- プロジェクトも本家WPと比べると小規模で、世間的に認知されているとは言いがたいです。
- 長所は短所の裏返しというところで、手の込んだ構造の記事を作るのには、Gutenbergと比べるとどうしても時間も手間もかかってしまいます。
向き・不向きについて
上記の事情を総合して考えると、以下のように言えると思います。
- マイクロブログ(あるいはXやBluesky等の代替ツール)として運用している
- あらかじめ形の決まっている記事・目録等を多く公開している
- パソコンのスペックがそれほど高くなく、Gutenbergで動作不良を感じている
- (企業サイトなど)社内規定に抵触するためにGutenbergが使えない場合
- 手の込んだ記事をどんどん書きたい
- Gutenbergにもすっかり慣れてしまっている(もしくは今更クラシックエディターを使う意欲が湧かない)
- WordPressで使える様々なプラグイン・テーマを、できるだけ制約なく導入したい
- 英語に不慣れである(日本語化が不十分ということもあり、ClassicPressは本家以上に英語で対応できる必要があります)
ClassicPressにおすすめのテーマ・プラグイン
おすすめのテーマ
有名なWordPressテーマ「Cocoon」が「ClassicPress」に対応されたことが発表されております。現状、私の知る限りにおいては、日本語環境の方が安心して使える唯一のClassicPressテーマです(今後も対応テーマが増えるかもしれません)。
対応しているWordPressプラグイン
上記において「対応していないプラグインがある」という旨を申し上げましたが、「Gutenberg」の機能に直接タッチしていないものであれば、使うことができるかもしれません。5
具体的には、以下のようなプラグインは使うことができます(一例)。
- All In One WP Security
- Category Order and Taxonomy Terms Order
- ImageMagick エンジン
- WP Multibyte Patch
ClassicPress専用のテーマ・プラグインについて
ClassicPress専用のテーマおよびプラグインは以下のページにて公開されております。7
また、ClassicPress専用のテーマとプラグインを直接検索・インストールできるようにするプラグインも用意されています。こちらも使えるようにしておくと良いかもしれません。
もっとも、今は種類が少ないので、入れるのは時期尚早とも言えるでしょう。保留しても十分OKだと思います。
関連資料(外部)
上記にも書いた通り、プロジェクト自体が日本ではあまり知られておらず、日本語で手に入る情報もほとんどない状況ではあるのですが、それでも気にしてくださっている方はいらっしゃるようです。頭が下がる思いです。
プロジェクト運営に至る経緯など(翻訳記事)
WordPressからの移行手順(戻す手順)について
こちらについては、上記で紹介したWordPressテーマ「Cocoon」の作者の方が詳細な記事を書いてくださっております。
もちろん、WordPressからの移行ではなく、公式サイトに用意されているZipファイルから直接ClassicPressをインストールすることも可能です。
終わりに
実はたまたまCocoonのアップデート情報を見ていて、この「ClassicPress」のことを知りました。早速、実験的にサイトを立ち上げ、どんどん記事を積み上げていっているところです。
やはり、「クラシックエディター」の軽量さは素晴らしいですね。Gutenbergとはまた違った良さがありますし、少なくともメモ目的のブログを運用するにはGutenbergよりもクラシックエディターの方に分があるように思います。
一方で、登場時は評判の良くなかったGutenbergも、ほんの少しずつではありますが、着実に良くなってはきています。また、この記事のようにまとまったものを書こうと思ったら、やはりGutenbergの方がやりやすいです。
ともあれ、Gutenbergとクラシックエディター、この2つの良さを理解しつつ、今後もWordPress(ClassicPress)を運用し続けていきたいものです。
ClassicPress運用例(自サイト)
最後になりますが、先ほど述べた「ClassicPress」で作っているサイトが以下になります。見た目だけならWordPressとほぼ代わりないことがお分かりいただけるかと思います。
上記もちまちまと更新しておりますので、見ていただけますと嬉しいです。
関連記事
脚注
- Release Archive | WordPress.org 日本語 ↩︎
- ClassicPress Version 2.1 is out! | ClassicPress ↩︎
- ClassicPress core development update | ClassicPress ↩︎
- なお、翻訳ファイルの流用はライセンス的には特に問題ないのですが、流用の実作業の際は自己責任でどうぞ。 ↩︎
- あくまで可能性であり、動作を100%保証するものではありません。 ↩︎
- 厳密には「ClassicPress本体をアップデートしてください」という旨になっております。ただ、最新版をインストールしていてコレなので、対応しようとするだけ無駄です。 ↩︎
- 専用のテーマもプラグインも、お世辞にも種類が豊富とは言いがたいですが……。 ↩︎