私がインターネット上にあげている写真については、被写体としてふさわしいもの(キャラクターや芸能人など)以外のもの、とりわけ一般人については極力モザイクをかけるようにしています。これでもかというくらいにはぼかしを入れている自覚があります。他の人からみると、少々過剰気味かもしれません。
もちろん、それには理由や信条があります。この記事で理由を説明した上で所信表明も少しばかり行ってみております。少しでもお役に立てていただければ幸いです。
映り込んだもの(特に一般人)にモザイクをかけている理由
私がネット上にあげる写真において、特に映り込んだ一般人の方にモザイクをかけまくっているのは、主に以下の理由が当てはまります。
- 肖像権の問題
- 生成AIの利用者に悪用される危険性
- ストーカーや野次馬たちに利用される危険性
- 「なりすまし」として利用されるリスク
- 予期しない箇所で悪影響を与えてしまうリスク
以下、詳細を1つずつあげていきます。
理由の詳細
肖像権の問題
これは昔から言われていることですね。他人に無断で顔写真をあげることにおいて、法的なリスクといえば、おおよそこちらの問題について取り沙汰されることが多いことでしょう。
これに関しては今更私がどうこう言うこともありませんし、そもそも私は弁護士でもなければ、その他リーガルチェックを行える立場の人間でもありません。専門家の解説をご覧いただければ良いかと思います。
ただし、上記の論点だけをもって顔写真の無断アップロードについてあげつらうのは、今や時代遅れと言っても過言ではありません。むしろ、SNSなどで写真・動画をアップロードすることが広く行われている現在、重要なのは以下の4点になります。
生成AIの利用者に悪用される危険性
生成AIで精巧な画像が生成されるようになった現在、ネット上の不特定多数の写真をもとに自分好みの写真を無断で生成することが可能となっております。生成AIの画像生成機能の是非についてはこの記事では取り上げませんが、少なくともこういった悪用事例が少しずつ明るみになってきております。
特に、最近は子どもの盗撮写真を拝借して生成AIにかけ、自分の性的欲求を満たそうとした小学校の教員が逮捕される、といった事例もでてきております。
この事例では写真の盗撮という悪行も含めて問題となりましたが、もちろん盗撮写真でなくネット上にあがっていた写真を使って生成したとしても問題となります。
自分自身や親友、あるいはご家族の写真を悪用されるのはもちろん、自分の知らない誰かが、写真をあげてしまった自分のせいで悪用される憂き目に遭うリスクが既にあるわけです。それが実際に起こってしまったとすれば、写真を撮った身からしても悔しく苦痛なことだと思っております。
ストーカーや野次馬たちに利用される危険性
ネット上であげられている写真の1つ1つそれぞれは、情報としては微々たるものではあります。そして、私たち一般人にとっては、そんなに気にするほどの情報源にはなりません。
ただし、ストーカーや炎上事案の野次馬たちの手に掛かれば、話は別です。彼らは尋常ではない執念でパズルのピースを探し出し、写真1枚1枚から出てくるわずかな情報をつなぎ合わせるといったことを平気でやります。
また、上記で生成AIの話をしましたが、生成AIの登場により、場所の特定もかなり容易になっています。ということは、足取りの特定も飛躍的にやりやすくなった、ということです。従って、自身が追っている対象を追い詰めていくこともやりやすくなっている、ということにもつながります。
とあるストーカーが質問掲示板で善意の一般人を装って情報収集を続け、その結果殺人事件につながった、という事例はとても有名です。ただ、最近はそんなことをしなくても良くなっているのです。技術の進歩がすさまじい反面、こういった悪用もしやすくなっているのですね。
たまたまあげた写真がパズルのピースになってしまい、事件につながってしまった場合、責任は取れるでしょうか。少なくとも、私自身はそうはなりたくはありません。
「なりすまし」として利用されるリスク
こちらも最近多くなっている事例ですね。著名人以外にも、一般人を装ってSNSアカウント等を開設するという事案が本当に数多くございます。
この場合、アイコンにしている写真は十中八九本人のものでなく、ネットで見つけた写真であるか、もしくはそれを使って生成AIで作り上げたものと言って良いでしょう。仮に「十中八九」という言葉が正しくなかったとしても、なりすましている方本人の特定に直接つながるような写真をアイコンにするほどの馬鹿な行いはしません。
こういった違反行為の片棒を担がないようにするためにも、余計な「素材」は与えないよう、工夫が必要です。
予期しない箇所で悪影響を与えてしまうリスク
上記以外にも、たまたま映り込んでしまった方、および撮影した方の双方にとって、予期しないところで悪影響を与えるということは起こりえます。
- 映り込んでしまった方の黒歴史になっているリスク
- 不適切な行為(撮影者・第三者の知り得ない事情含む)が映り込んでしまっており、その方の将来に大きく響くリスク
- 知らないところで「商用写真」「観光資料」などとして盗用されるリスク(日本国内に限りません)
いずれにしても、自分の知らないところで炎上の材料になっているかもしれず、そうなってしまうと、将来的に自分自身にとっても責任等が発生しうるリスクとなります。
たった2つの重要ポイント
1度あげたものは取り消せない
上記から分かるように、無関係な映り込みなどについて極力モザイクをかけるようにしているのは、肖像権そのものの問題というよりは炎上リスクの回避という側面が大きいです。そして、それはできるだけ写真や動画をアップロードする前に対処しておくべき性質のものでございます。
一度アップロードし、公開の場に投稿し、ネットの海に広まってしまった写真や動画は、なかなか取り消せません。特に炎上の材料になってしまった画像・動画は、「消すと増える法則」や「デジタルタトゥー」といった言葉に代表されるように、インターネット上をかけめぐります。
そのため、「一度公開したものは取り消せない」という言葉は強く肝に銘じておく必要がございます。インターネットが誰の手のひらの上にも存在しうる今、軽率なアップロードは忌避しておくに越したことはありません。
アップロードしない勇気
撮影した写真・動画をアップロードすることが日常的になってしまった今、撮影後に即アップロードしてしまう方は少なくないと思います。
映り込みがなければ、私自身も割とサクッとアップロードすることもあります。一方で、映り込みが多くモザイク処理などの編集が間に合わないなどの理由でアップロードしていない写真も数多くございます。このような写真は、「無害化の処理」が完了するまではアップロードしない方がベターです。
一時の欲求に駆られてアップロードしてしまう前に、一旦立ち止まってみませんか。「アップロードしない」ことも立派な選択肢の1つですし、勇気ある決断だと思っております。
終わりに
ここまで書いてきましたが、要するに「知らない誰かの身を守るため」にぼかしを入れている側面はあります。そして、それが自分の身を守ることにもつながっている、と私は考えております。特に「顔写真」はどんなシーンでもとても強力なカードとなり得ますので、悪用防止のため、できることはやっておかなければなりません。
上記で既に述べたとおり、本件は「肖像権」だけの問題にはならなくなってきております。そして、インターネット含む技術の進歩はすさまじいため、明らかなリスクはあらかじめ潰しておく必要がございます。逆に言えば、余計な情報は開示しないように努めるようにするのが賢明です。
今後もインターネット上でうまくやっていきたいですし、うまくやっていく必要がございます。そのためにこそ、できることはしっかりとやっておきたいものでございます。

