【写真】大田市駅近くにひっそりと遺されている「パル」跡地

2020年4月7日風景大田市,廃墟

今なお遺されている大田市の商業施設「パル」跡地。シャッターと垂れ幕が生々しい

世界遺産「石見銀山」の玄関口であるJR大田市駅から歩いて3分ほどのところに、その建物はあった。

大田市駅前の商業施設「パル」。1982年に開業してから、2015年5月11日付で運営会社が自己破産の手続きを開始するまでの約33年もの間、大田市の住民を支え続けてきたようだ。

廃業当時に出された以下のニュース(魚拓)によれば、1993年には44億円もの売上があったということらしい。しかし、その後は、バブル崩壊や生活スタイルの変化の影響を受け、売上は減る一方であった。

このニュースを見るだけでも、当時の混乱ぶりが分かるというものである。本当に突然の閉店だったようで、閉店セレモニーらしき情報も出てこない。何より、自己破産となった日にも買い物をしようとしている人が訪れていたという記述から、お客さんには何も知らされていなかったようである。

翌日の12日には、食品スーパーの在庫処分のため、特別に店を開けているということだそうだ。しかし、それ以後は、本当に何の音沙汰もない。

 

閉店以後も土地や建物の買い手はついていないらしく、廃業から5年が経過しようとしている今になっても、当時の面影が生々しく残っている。入口のシャッターは閉まったまま、何も停まっていない駐車場跡地、そして、未だにぶら下がっている、石見銀山の世界遺産登録を祝賀した横幕1)なお、石見銀山が世界遺産に指定されたのは2007年のことで、その後2010年に登録範囲が拡大されている。。その全てが、今もなお、公に晒されている。

付近を通っている国道9号線には、大型のスーパーやドラッグストアなどが立ち並んでおり、日常生活を送る分には困らない。「パル」が廃業したところで、近隣住民の生活には、直ちに大きな変化など起こらなかったのだろう。

そうは言っても、市の玄関口である駅の目と鼻の先に佇んでいるランドマークが、全くもって稼働していない。その有様を目の当たりにするだけでも、地方都市が置かれている厳しい現実を突きつけられてくる、そんな気がする。

 

かつて賑わっていた駅前の商業施設は、姿かたちを変えることなく、駅を通るあらゆる列車を、今日も眺めてくれていることだろう。

脚注

1 なお、石見銀山が世界遺産に指定されたのは2007年のことで、その後2010年に登録範囲が拡大されている。

Posted by 稲葉 大和