【感想】『かまいたちの夜 サウンドトラック』

2020年1月23日趣味・娯楽ゲーム音楽,加藤恒太,中嶋康二郎,スパイク・チュンソフト,旧チュンソフト

『かまいたちの夜 サウンドトラック』ジャケット(Amazon.co.jpから)

「こんや めいきょくが あらわれる」1)同ゲームのスパイ編におけるメッセージ「こんや かまいたちが あらわれる」の改変。念のため。

 

CD概要

1994年にチュンソフト(当時)より発売されたSFC用ゲームソフト『かまいたちの夜』において使用されている音楽を収録したもの。全38曲。作曲は加藤恒太(たくまる)さん中嶋康二郎さんの2名。

サスペンス・ホラーの要素をふんだんに盛り込んだゲーム内容に、非常によく合致した楽曲群であり、ゲーム発売当初から高く評価されている。その曲の素晴らしさたるや、今でも十分に通用するものがある。発売から既に25年を経過している今になっても、時折テレビのワイドショー等で使用されることがあるほど。

当時の定価は2,427円(税抜)であるが、廃盤となって久しい現在ではプレミア価格で取引されており、どんなに安くとも3,000円くらいは覚悟しておかなければならない。実際、私はこのCD1枚のために5,000円近く支払った。後悔はしていない。

なお、全曲ともに1ループのみのため、この手のCDに耐えられない方は購入を見送るのが良いだろう。また、ネタバレ防止のためだろうか、実質ラストシナリオである「不思議のペンション編」でしか使われていない楽曲は、一切収録されていない。また、効果音の類もないので気をつけよう。

 

CD外装

『かまいたちの夜』CD外装(ケースを開いた状態)

CD外装は、文字通りの「血のついたメッセージ」である。本当に「らしい」外観だ。

 

【感想】おすすめの楽曲を4つほど

どの曲も作品に良いスパイスを添えてくれるものばかりで、どれもこれも語っていたい。けれども、そんなことをやっていると、とても身が持たない。

そこで、特に優れているものを4つほど選び抜くことで、感想にかえることとしたい。

 

その1:『わしが香山や! ~男の大往生~』(トラック5)

明るい系の楽曲の中でも群を抜いて頭に残っているのがこれ。加藤恒太氏の作曲。

タイトルを見れば一目瞭然、大阪で会社社長を務めているという香山誠一氏のテーマソングである。同氏の押しの強さ、性格の豪胆ぶり、コミカルな言動などがこの一曲に詰め込まれている。この1曲を聴くことで、シュプールの談話室での和やかな雰囲気を感じた方は数多いことだろう。

なお、ブックレットには、ご丁寧にスエニョ麻野氏2)言うまでもなく本作監督の麻野一哉さんを指す。による歌詞まで掲載されている(本編でも「Oの喜劇編」で実際に使用されている)。歌詞に「ミステリー編」未解決時のネタバレが含まれているので、念のため未プレイの方は注意されたい。

 

その2:『疑心暗鬼』(トラック13)

これでもかと不安と焦燥感を煽ってくる、『かまいたちの夜』ならではの一曲。これも加藤恒太氏の作曲。

特に「ミステリー編」で事件が未解決のまま進んでしまったら、嫌というほど聴くことになる。1ループ自体は短く構成も単純明快ながら、不思議と負の感情が湧き上がってくる、サスペンスの劇伴としては模範的な1曲だ。

「ミステリー編」においてはこの手の楽曲が多数使われているが、その中でもこの曲が抜きん出ているのは間違いない(※個人の感想です)。

 

その3:『遠い日の幻影』(トラック24)

おそらく『かまいたちの夜』の中でも最も有名な楽曲の1つであろう、この1曲。やはり加藤恒太氏の作曲。

本編では「ミステリー編」のエンディングのいくつかで使用されている。だが、いずれもトラウマを植え付けるほどの陰鬱さであるだけに、頭に残っている方も多いのではないか。特に「サバイバル・ゲーム」突入後のエンディングで、画面が真っ赤に染まり、その後雪が舞う森へと変わってゆくという一連の流れを、同曲が流れる中見せつけられたら、この曲だって脳裏に焼き付かないはずはない。

音楽そのものは、全体として悲惨な曲調でありながらも、主旋律を奏でている笛にはどこか美しさが感じられる。兎にも角にも、「雪に始まり雪に終わる」と言っても過言ではないサスペンスドラマの締め括りには相応しい一曲だ。

冬場はもちろんマッチするだろうし、夏においても、もしかすると避暑の効果があるかもしれない、なんて。

 

その4:『失くしたものは』(トラック30)

最後に「ミステリー編」での使用楽曲以外から1つ。こちらは「スパイ編」のバッドエンディングのみで使用されているもので、中嶋康二郎氏の作曲だ。そして、私がこのCDの中でも最も気に入っている楽曲でもある。

1ループが4分超えと長いこともあってか、全てを聴き終えないうちに本文ラストを迎える方が続出。改めて1曲を通して聴いたところで初めて良さが分かるという、ゲーム音楽では割とよくあることが、『かまいたちの夜』でも起こってしまった。

曲そのものは、なぜこの音楽が「ミステリー編」で使われなかったかが不思議なくらい、とても悲痛な楽曲である。静と動もうまく使い分けており、他のスパイから撃たれてしまい、今まさに死を迎えんとする主人公の最期をうまく表現できていると思う。

この曲だけは是非とも最後まで聴いてほしいところ。構成の素晴らしさに度肝を抜かれるはずだ。

 

ブックレットについて

CDのブックレットは簡素なものかと思いきや、結構面白いことが書いてある。手に入れた方は必見。

 

我孫子武丸氏からの、ある意味辛辣なコメント

まず、制作者からのコメントのうち、同作のシナリオライターを務めた我孫子武丸さんは、締め括りとして以下のように言っている。

もし、「こんな曲は聴いたことがないぞ」なんてことがあったら、またソフトをプレイしてみてくださいね。

ゲーム音楽のCDに添えるコメントとしては極めて真っ当だが、これは『かまいたちの夜』である。当記事をご覧の方はご存じとは思うが、ゲームの根幹をなす「ミステリー編」では使われていない楽曲も存在する。

具体的には、上にもあげた「スパイ編」のバッドエンド曲『失くしたものは』、「悪霊編」の見せ場を象徴すると言っても良い『ノスタルジア』(トラック33)、全体としてギャグシナリオながらも和やかな空気を作り出してくれる『Oの喜劇』(トラック36)などが挙げられる。

これらの楽曲を聴けるようになるまでゲームを進めてくれれば嬉しい」という、制作者ならではのメッセージが込められているように思う。そこまでが非常に大変だけれども。

 

作中場面のカットイン

楽曲紹介のページにおいては、作中からのカットイン画像が1曲につき1枚ずつ掲載されている。ゲームそのものを振り返るという意味でも、こういった作りはなかなか見ごたえがあって良い。単なる楽曲の羅列に終わりがちな紹介部分と比べれば、遥かに手が込んでおり、制作チームの愛を感じられる。

ただ、1つ言うべきことがあるとすれば……。どうして『悪霊』(トラック35)のカットインが「アレ」なのだろうか。もっと良い場面があったのでは(これはこれで面白いけれども)。

真相は実際に買ってみて確かめてほしい。そして、真相を既に知っている方は、この言い分に納得するだろうか(してほしい・苦笑)。

 

関連商品の販促

ブックレットの最後にデカデカと載っている販促。これは実際に以下の写真を見ていただきたい。そして、ページ内容の感想については「ノーコメント」ということで。

CDのブックレットにおける販促ページ。見開き2ページ、まるまる使っている

脚注   [ + ]

1. 同ゲームのスパイ編におけるメッセージ「こんや かまいたちが あらわれる」の改変。念のため。
2. 言うまでもなく本作監督の麻野一哉さんを指す。

Posted by 稲葉 大和